1日1本映画レビュー 『十二人の死にたい子供たち』

『十二人の死にたい子供たち』

 

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原題:『十二人の死にたい子供たち』

公開:2019

監督:堤幸彦

出演:杉咲花

   真剣佑

   北村匠海

   高杉真宙 他 

 

 

12人程度の死にたげな子供たちのオフ会

 

 

以下感想。

 

【特にしていない期待すら裏切るクオリティ】

 

監督が堤幸彦、ごり押しの若手俳優陣。

この時点で負け戦やねんけど、原作が「天地明察」の冲方丁ということで、そこまで酷い出来にはならんやろ、ということで鑑賞。

 

そんな低すぎるハードルすらロクに越えられない、お遊戯会みたいな映画やった。

 

 

あらすじ。

 

ミッション:集団安楽死

場所:廃病院

参加者:12人の未成年

謎:13人目の死体

死にたいけど、殺されるのはイヤ。

その日、12人の未成年たちが、安楽死を求め廃病院の密室に集まった。「みんなで死ねば、怖くないから」ところが、彼らはそこで13人目のまだ生あたたかい死体に遭遇。突然の出来事にはばまれる彼らの安楽死。あちこちに残る不自然な犯行の痕跡、次々起こる奇妙な出来事。彼らだけしか知らない計画のはず。まさかこの12人の中に殺人鬼が……? 死体の謎と犯人をめぐり、疑心暗鬼の中ウソとダマしあいが交錯し、12人の死にたい理由が生々しくえぐられいく。

全員、ヤバい。気が抜けない。

いつ誰が殺人鬼と化すかもわからず、パニックは最高潮に。

https://filmarks.com/movies/80921より)

 

 

ネットで知り合った自殺願望のある12人の少年少女がみんなで安楽死しよう!ってんで集まるんやけど、すでに謎の13人目の死体があってパニック!

みたいな。

 

どうやら

 

・みんなが疑い合い、嘘とだまし合いの心理戦が繰り広げられる

・参加者が抱えたトラウマが露になっていく

・登場人物が全員クセだらけでヤバイ

・めっちゃパニックになる

 

らしいです。

 

 

【死にたくなさそうな子供たち】

 

変な話、死にたくて集まってるんやから「さっさと死ねばいい」のに、こいつらなかなか死によらん。

謎の死体を発見して、その犯人を見つけないことには死ねない!ってなるんやけど、その流れがかったるくて、展開のための無理矢理感が強い。

 

「自殺のために集まろう」→「既に死体が!」→「殺人鬼が混じってる?!」→「見つけなきゃ!」

っていう流れから映画を面白くしようとしてるんやけど、「いやさっさと死ねばよくない?」っていうツッコミを入れることができるのは残念。自殺願望者が殺人鬼を探そうとする根拠がもう少し必要やと思う。

 

 

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参加している子供たちは、おのおの死にたい理由があって、どうやら育児放棄されたとか、いじめとか、そういう問題を抱えているらしい。

 

とはいえ、そもそも根本として、みんな全然死にたくなさそうなのよね。

 

演技のクオリティがカスってのは置いといても、脚本が全くもってキャラクターを掘り下げられておらず、キャラクターの口頭によって死にたい理由が説明される。

あまりに表面的でリアリティがないから、同情もできないし興味もわかない。

 

 

「僕はいじめられてて…」

 

「病気で…」

 

「家庭の事情で…」

 

そういう抱えていた重いモノを思い切って打ち明けられたり、なんだかんだ人と関われてるって時点で結構前向けてない?

 

そういった告白に対して、みんな

 

「大変だったね・・・」

「吃音、そんなに気にならないよ!」

 

みたいな感じであったかい。

仲良さそうやしみんなで今から焼肉でも食いに行けば?

 

 

子供たちの死に対する願望が全く伝わってこないから、そもそもタイトルの「死にたい子供たち」って部分が破綻している。

 

 

 

「ぼぼぼぼ僕の名前は、たたたたたたかひろで・・・」

 

 

吃音患者なめとんか?

 

 

 

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12人の子供たちも「クセだらけ」みたいな形にしたいんやろうけど、根本の考え方が一緒やし、単純に浅いし、つまらないし、そもそも深掘りされてないから、見た目とか口調、家庭環境とかの表面的な部分でしかキャラが差別化されていない。

 

 

金髪のギャル、ゴスロリ、ヤンキー、優等生、どれをとっても平凡。

クセのあるメンツを集めよ問題の模範解答。

あとは金持ち、いじめられっ子、アイドルとか。

 

杉咲花に至っては何?魔女?

 

 

みんな型が違うだけで、肝心の中身はステレオタイプすぎて、「曲者」がおらず、そうじてダサい。

 

疑心暗鬼の嘘と騙し合い、なんてのはそれがもう嘘で、「騙し合い」というよりは「言い訳」と「不愉快なマウンティング」の応酬。

 

演技は下手くそやし、キャラっぽすぎてリアリティがない。

杉咲花や真剣佑のように演技力が高い人も出てるけど、活かせてない。

 

死にたいはずの子供たちが身を寄せ合って、和気あいあいと友情を作っていく。

 

 

何これ?

 

 

 

 

 

 

はよ死なんかい。

 

 

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ギャル「死にたい。口にヘルペスできたから・・・」

 

 

ぶん殴るぞ。

 

 

 

 

 

 

謎解きには興味がないし、事件は退屈やし、真実とオチは見え透いてるし、ドラマはくだらない。

 

現代社会の、「若者が生きる力を失い無気力になっている」側面や、「ネグレクトやいじめが社会問題となっている」っていう部分を取り上げ、みんなで死ねば怖くない的な、命に対する考え方が歪んできている問題を定義する。

しかし「自分が殺されるかもしれない」という疑念を抱いたとたん、「死にたいのに、殺されたくない」という矛盾した感情が生まれ、初めて死の手触りを感じる。そうして、「死にたくない。生きたい!」ってなる流れなんやろうけど。

死を描いた作品が、むしろ命の力強さを描き出す。みたいにしたかったんやと思う。

 

 

いや、こんな映画が「命の尊さ」を分かった口で語るなよ。キレそうなんですけど。

 

 

 

これで感動したり楽しんだりできるなら、この世のすべてのエンタメを楽しめると思う。

退屈さを想像力で補完し楽しめる人がいてもいいと思います。面白かった!と感じた人を否定するつもりはないよ!正直ちょっと誇張して悪口を言っている部分はあります。

そもそも否定する気で鑑賞するのはフェアじゃないから、もしこの作品に興味があったらフラットな気持ちで見てほしいと思う。

 

 

 

エンタメ:☆★★★★

テーマ :★★★★★

バランス:★★★★★

好き  :★★★★★

計  1/20

 

出てる女性たち可愛いなってことで1点。

 

 

 

 

〈オススメの堤幸彦監督作品〉

・なし