『ブラッドボーン』をクリアした男
死にゲーという言葉を聞いたことあるだろうか?
死にゲーとは、理不尽な死を繰り返し、ひたすら死に続ける中で、少しづつ攻略の糸口をつかむというゲーム性を持つゲームのことである。
昔、フラッシュゲームとかで、初めてのプレイでは到底クリアできないような理不尽な仕掛けが散りばめられていて、何度も何度も死ぬ中で進み方を覚えていくゲーム(「I wanna be the guy」とかそのあたり)があったと思うけど、ああいうのが死にゲーに相当する。
そんな死にゲーを、硬派なアクションゲームとして練りこみ、死にゲーアクションというジャンルを確立した、死にゲー制作の第一人者として認識されているゲーム会社がある。その名は、「フロム・ソフトウェア」。
フロム・ソフトウェアといえば、死にアクションゲーの礎を築いた「デモンズ・ソウル」をはじめ、ファンタジーアクションに金字塔を打ち立てた「ダーク・ソウル」シリーズ、硬派な職人アクションゲーム「SEKIRO」など、名作とされているアクションゲームを世に出し続けている。
そんなフロム・ソフトウェアが誇るダーク・ファンタジー「ブラッドボーン」を、先日ようやくクリアした。プレイ時間約30時間弱。
アクションゲームは、そもそも子供のころに「モンスターハンター」に夢中になったし、難易度高めの奴で言ったら「仁王」とか「Last of us」とか、先述の「SEKIRO」はプレイしたことある。けど、一人で最初から最後までしっかりとクリアしたのは初めて。そもそもそんなにゲームをやらない人やから、一人でゲームをクリアしぬくということすらはじめてに近い。
いやあ、大変やりごたえがあって楽しいゲームやった。
いかにこのゲームが神ゲーであるかを、俺なりにかみ砕いていきたいと思う。
とはいえ、そもそも死にゲーアクションゲームというジャンル自体がかなり辛口なゲーム。
攻略の糸口が見えず死に続けながら模索するという、かなり「マゾヒズム」に満ちたゲームやから、気軽におすすめはできないし、難易度自体も決して低くない(というかかなり高い)。
実際にこの「ブラッドボーン」では、「初めて戦うボスを倒したプレイヤーが半分しかいない」という事実(トロフィー獲得率が50%を切っている)から分かるように、このゲームのたまらない面白さを味わう前に挫折してしまう人も少なくない。
けれど、個人的な意見としては、これはクリアした者としての驕り高ぶりではなく、あくまで客観的な意見として、このゲームはそこまで難易度が高いとは思わない。むしろ、「SEKIRO」とかに比べたら簡単といってもいい。
・適当にガチャガチャボタンを押す
・何も考えずに先に進む
・敵の動きを分析しない
こういった行動は、ゲームをやるうえでかなり頻繁に起こる行動やと思う。
実際、俺もゲームをやるうえで、この3つの行動をやってしまう。
別にそれが悪いわけではなくて、例えば「モンスターハンター」なんかはそれでもクリアできるし、楽しめるなら、それが一番。
しかし、この「ブラッドボーン」というゲームはそういった甘い行動を咎めてくる。最初の街にいる最初の敵もしっかり強いし、適当に戦ってると簡単に殺される。
相手の動きを観察したり、一対複数にならないように敵をおびき寄せたり、アイテムをふんだんに活用したり、といった動きをしないと、一向にクリアできないようになっている。
それがこのゲームの難しさを生んでいる要因の一つなんやけど、逆に言えば、そういった準備や丁寧な動きを怠らなければ、あっさりクリアできるようになっている。
死に続け、理不尽に怒りながらも、ついコントローラーを握りなおしてしまう。死を乗り越え、その都度少しずつ動きが洗練されていき、次第に攻略の糸口をつかめるようになる。そして苦闘の末ステージを攻略し、勝利の美酒に酔いしれたのちにこう思う。「なんでこんなんがクリアできなかったのか」と。
このゲームは、成長の実感と達成の喜び、自身のスキルのレベルアップによる優越を肌で感じることが出来るゲームなのである。
絶望の中に定期的にそれを達成する喜びをちらつかせる。絶妙なバランスの飴と鞭が、いつしかプレイヤーを「どM」にしていく。もっと、もっと難しいボスをくれ、もっと理不尽な攻撃をしてくれ、と、ブラッドボーンから離れられなくなる。しまいには、生物としての常識から離れためちゃくちゃグロテスクな見た目のボスを至高のヒロインとして崇め奉る始末である。
そして何よりたまらないのが、圧倒的に攻撃的なゲーム性。
「モンスターハンター」をプレイしていた人ならわかると思うけど、こういう類のアクションゲームというのは、「回避」をうまく使うのが、敵と戦う上でとても重要になってくる。
そして、我々「モンスターハンターポータブル」世代には、”攻撃をしたのちに回避をして敵と距離をとる”という戦闘プログラムが、血肉にインプットされている。
この「ブラッドボーン」というゲームは、ガードという概念がない(正確に言うとあるけど、飾りみたいなもの)。ゆえに、このゲームにおける守備はすべて「回避」によるものとなる。
なので当然、中学生ぐらいの時にDNAに刻み付けた「回避プログラム」を用いて敵と戦おうとするんやけど、「ブラッドボーン」は、「モンスターハンター」のような転がって回避する行動がすごく弱い。
相手の攻撃を無効化する無敵時間が短く、無敵時間が切れた後は、起き上がるまで行動不能。その間に敵はガンガン距離を詰めてきて、次の攻撃を繰り出してくる。当然そうなるともう一度すぐさま回避をするか、間に合わず攻撃を食らうかしかない。なので、一向に相手に攻撃を食らわせることが出来ない。
しかし、このゲームにはもうひとつ回避の手段があって、「ステップ回避」というものがある。
「モンスターハンター」でいうとランスを使っているときの回避に近いんやけど、このステップ回避がとんでもなく優秀。
相手の攻撃が当たる寸前に回避をしてもしっかりと攻撃をかわすことができ、なおかつ相手の裏に回り込むことが出来る。さらに、回避したのちにすぐさま攻撃へとシフトすることが出来る。あらかじめ回避しておく、のではなく、相手の攻撃に合わせて的確な回避をする、それによりあらゆる状況から反撃を食らわせることが出来るのだ。
相手の攻撃を食らうのを怖がって転がり回避で距離をとろうとする→むしろ相手の攻撃を食らう、仮に回避できても反撃がロクにできない
相手の攻撃を食らうのを恐れず、ステップ回避を交えて常に前のめりで攻撃する→タイミングよく回避すればひたすら攻撃し続けれる
といった感じ。
口で言うのは簡単でも、どうしても、相手が攻撃を仕掛けてくると、距離をとって離れたい!という心理が働く。それをぐっとこらえて向かっていくと勝てるようになっているのだ。
つまり、アグレッシブに攻撃し続けることが攻略の一番の近道というゲーム性になっている。
相手の連撃に対してどのように回避するか。トライアンドエラーを繰り返しながら相手の攻撃パターンを覚え、的確な回避の方法を覚え、ひたすら仕掛け続ける。
これがまあ最高に面白い!
さらに、このゲームにはパリィというシステムがあり、相手の攻撃の直前に銃を撃つことで、怯ませることが出来る。これによって、
相手に対して積極的に仕掛ける→相手の攻撃をステップ回避で避けて、攻撃をする→反撃をしてきた相手に対してパリィで怯ませる
という、かなりスタイリッシュな動きが実現できてしまう。
いままで作り上げてきたアクションゲームの常識が壊されていく…
そして新しい世界が開かれていく…
ああ!!もっと俺を鞭でぶってくれ!といわんばかりに、性癖が開拓されていく心地を味わってほしい。
とはいえ、最終的に女王様をぶち殺すことになるわけやねんけど。
こういった病みつきになるゲーム性はフロム・ソフトウェアの特徴ともいえて、例えば「SEKIRO」は、「ブラッドボーン」とは違って回避がとても弱い。回避ではなく、相手の攻撃を正面から刀で受け止めて、タイミングよく弾き返すというゲームになっていて、これはこれでまた中毒性がすさまじい。
そしてフロム・ソフトウェアのゲームの魅力といえば、やはりダークな世界観のストーリーやろう。
けど、ストーリーといってもほとんど作中でストーリーを語られることは無くて、「ストーリーを一ミリも理解どころか認識していなくてもクリアできてしまう」という仕様になっている。
基本的にムービーやNPCの語り、アイテムの説明文などからストーリーを想像しなくてはならない。
だから、次何をしなくてはならないのか、どこに向かえばいいのかわからなくなることが本当に多発する。
けど、しっかりと向き合って丁寧に追っていけば、映画のような壮大な世界観のダークファンタジーとなっていることが分かる。
大まかな設定としては、
謎の病が蔓延。それは罹った人が獣となってしまい、人を襲うというものだった。
主人公はそれを倒す狩人で、獣の病の原因を突き止めて病の蔓延を防ごう!ってのがざっくりとした目的。
最初の街ヤーナムは医療の街で、医療協会ってのがおるんやけど、なんかこいつらきな臭いことやってるぞ、っていうのが最初の始まり。
そこから、獣の病の真実や、人間の醜い本質、悲しい歴史とかがあらわになる、みたいな話。
結構ホラーチックで(悪夢そのものがステージになってたりする)、ゾクゾクしながら楽しむことができる。ストーリーはまあおまけみたいなもんやけど、興味深く解説してるYouTubeの動画もあるから、それを先に観るでもいいのかもしれない。
⇩わかりやすいし、解釈が面白いし、ユーモアが小気味いい
以下はネタバレを含むけど、俺が屠ってきたボスを紹介。
字数が増えたから記事を分ける。