1日1本映画レビュー 『翔んで埼玉』

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『翔んで埼玉』

 

原題:『翔んで埼玉』

公開:2018

監督:武内英樹

出演:二階堂ふみ

   Gackt

     伊勢谷友介

     他

 

 

誇り無き郷土愛ムービー

 

 

以下感想。

 

 

【楽しめなかったのは俺が関西人やからなのか】

 

 

この映画を楽しめた人、それはそれでいいと思う。

好きだという人を否定したくないから、そこは気をつけたいけど、やっぱりどうしても嫌いな作品に対しては語気が強くなってしまう。

 

俺のように、楽しめなかった人はたぶん徹底的に楽しめない。

 

かといって、0点か100点!のような突き抜けた映画でもない。

最初から予防線を張り、自分を卑下しながら、「結局のところネタなんで、大目にみてね?」という空気感を漂わせ、そのくせ、どこかで埼玉県を褒めてほしがっている。

 

映画全体に、埼玉県民の負け犬根性が染みついた、くっさいくっさい映画。

 

どうせやるなら

 

「関西人、お断り!!」

 

くらいのエネルギーでやればまだ良かったかもしれない。

 

つまり、この映画を俺が楽しめなかった理由は、俺が関西人だからではなくて、純粋に出来が悪いからやと思ってる。

 

 

 

 

【ローカルネタ自体は良いと思う】

 

俺は共学出身やけど、「男子校あるある」は大笑いできる。

やから、「関東あるある」も、やり方次第では大笑いできる。実際、映画の中で笑ったネタいくつかあった。

 

この映画の軸になる、「都会、田舎論争」っていうのは、実際にあらゆる土地に暮らしていても共感はできるはず。

兵庫県でも、神戸出身ですっていう奴は信用ならないとかあるし。

結局のところ「翔んで埼玉」っていう映画そのものがローカル愛あってのもの、っていうのも分かるし、関東圏に住む人からすれば笑えるんやろうなってことも分かる。

 

でも、おもんない。

 

ネタのクオリティ云々というより、その背後にある、見え見えのコンプレックスの存在が映画を根本的につまらなくしている気がする。

自虐ネタって、結局のところ「コンプレックスを感じさせない」から笑えるんやと思う。コンプレックス丸出しの自虐ネタは、ただの愚痴、卑下、この映画に関しては、ただのつまらない身内ノリでしかない。

郷土愛はあれど、この映画には誇りがない。

 

しかもそれを最も裏付けるのが、「劇中劇である」という設定。

映画の流れとしては、埼玉在住の女(島崎遥香)が結婚して東京へ。

「埼玉みたいなサイアクなとこ、早く出たいよ」

みたいな愚痴を垂れ流しながら結納へ向かう途中に、ラジオから「翔んで埼玉」の物語が聞こえてくる、というモノ。

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それを聞きながら、ぱるるが作品にツッコミを入れる、ブラザートムが感銘を受ける、みたいなドタバタ劇が行われ、現実パートと物語パートを交互にしながら展開していく。

 

この映画は始まってから自らで、

 

「この映画は茶番ですw」

 

と宣言している。

その姿勢がもう物凄くダサい。

 

この姿勢は、つまり

 

突っ込んだら負け!w

 

いや、この映画、クソ映画ですから・・・w

 

と、製作者自らがそれを宣言し、予防線を張っている寒さがある。

下らないけど、それが売りやから!と高々に宣言しながらつまらない映像を垂れ流す不快感は、ポプテピピックのスタンプを送ってこられた時に似ている。

 

また、作中でわざわざツッコミを入れるキャラを配置することで、

この映画はふざけた映画です

と自ら肯定してる。

真剣にふざけて、最初から最後まで真剣にふざければ、観客サイドがツッコミ役として楽しむことが出来たと思う。

けど、ツッコミ役(しかもクソつまらない女)をおいたことで、この映画はふざけるべくしてふざけている、くだらないコント映画へとなり下がっている。

 

コントって、10分そこらやから面白い。

いくら東京03のモノでも、120分もあるコントは誰も観ない。

笑いのプロでもない人間たちが作るくだらないコントを100分も観る苦痛。

 

 

 

【劇中劇はどうか】

 

映画の構造そのものがクソすぎることは置いといて、肝心の劇中劇はどうか。

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良かった部分もあった。

Gacktのアイドル映画としては良いと思う。かっこよかったし、目立ってた。Gackt自体結構カリスマ性がありそうやから、いろんな映画で観てみたい気持ちも少し芽生えた。

踏み絵のくだりとか、小島よしおは弱い!みたいなくだりも笑えた。

 

悪かった点は、キャラクターが興味深くない。

主役の二階堂ふみGacktが親交を深めるドラマも、伊勢谷友介のキャラクターも、全てが後出しで驚きがない。

大物俳優をたくさん使って、そこだけで小手先のエンタメを取りに来る姿勢は、近年のガキの使いの年末スペシャルみたいなもん。

 

いや、京本政樹に何やらせてんねん!

 

おもしろポイントそれだけ。

記号的なボケの応酬、訳の分からない展開、結局のところ「劇中劇」というサムさ。

 

 

吹っ切れてて楽しい!

 

ばかばかしすぎて一周回って面白い!

 

みたいな感想を狙ったんやろうなあという感想。

 

最後のエンドロールで、はなわ埼玉あるある自虐ネタを歌うんやけど、これがやたらと面白い。

なら最初からはなわのネタ観りゃいいよねっていう。

 

 

最初から最後まで、100%でふざけていれば、それはシリアスな笑いへと昇華したはず。そのなかでしっかりキャラクターとドラマを興味深く描けば、エンタメとしてもっと楽しい。

そこから埼玉の誇りを示し、人を地方や出身で差別する下らなさを笑い飛ばす、というテーマで喜劇を描けば、きっともっといい作品だったんじゃなかろうか。

 

 

【で、日本アカデミー賞

 

日本アカデミー賞は日本映画の催しモノ、お祭りみたいなもんやからグチグチ言うこともないんやけど、さすがにこの作品がノミネートされるのはひどい。

何が酷いって、これだけ見ると

 

2019年の日本映画って相当不作やったんやな

 

と思われかねないから。

むしろ、2019年の新作日本映画、めっちゃ面白いの多かったぞ!

なんでキングダムがノミネートしてるかも分からんわ。

 

いっぽう韓国ではパラサイトがアカデミー賞

日本では翔んで埼玉。

別に戦ってるわけじゃないけど、もっと芸術を振興しないと面白いものがどんどん日本から無くなって、商業的に注目されやすい陳腐なものばかりが蔓延するんちゃうかな。

若造が危惧することでもないけど、今回の日本アカデミー賞は本当にくだらなかった。

 

 

 

まあ、関東の人にウケたんなら、それでいいんちゃうかな。

 

 

 

エンタメ:☆☆★★★

テーマ :★★★★★

バランス:★★★★★ (浅すぎて分からん)

好き  :★★★★★

計  2/20

 

好きな人はそれでいいし、笑えた人はそれでいいと思う。

けど、観客を馬鹿にしているんかと感じた人間がいるということを分かってほしい

 

 

〈オススメの2019年の日本映画〉

・凪待ち

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・よこがお

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