1日1本映画レビュー 『千と千尋の神隠し』

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千と千尋の神隠し

 

原題:千と千尋の神隠し

公開:2001

監督:宮崎駿

出演:柊瑠美

   入野自由

     夏木マリ 他

   

 

 

現実と不思議な世界の狭間にあるノスタルジー

 

 

以下感想。

 

 

【なんとスクリーンで観た】

 

 

 

いまさらどうこう言うような作品ではないんやけど、映画館で観ることが出来た。

 

 

感動。

感無量。

 

 

子供のころに見まくった作品を、大人になって映画好きになってからスクリーンで観れるとは思わんかった。

ジブリ作品のリバイバル上映はホンマ名案。マスクして映画館に足を運ぼう。

 

子供の頃はなんとなく好きやな、と思いながら観ていた作品も、今見ると何とも味わい深い。

素晴らしいの一言やし、人生で一番好きな映画の一つ。

 

世界観、音楽、アニメーション、全てが作品の完成に噛み合っている。覚えてるだけで4回泣いた。

改めて、映画館で映画を観る楽しさを思い知った。

 

 

 

【魅力な世界観】

 

とにかく魅力的な世界観を持つこの映画。

現実世界の常識が全然通用しなくて、不可思議な世界のルールを押し付けられてしまう。

その感覚がめちゃくちゃ楽しい。

 

「雨が降ったんだから、海が出来るに決まってるだろうよ!」

 

 

意味が分からん。

でも、その不可解さがすべて魅力につながるんよね。

 

 

ジブリ作品、ひいては宮崎駿の作品といえば、なによりその世界観に浸る作品が多いんやけど、『千と千尋の神隠し』はそれらの世界観映画の終着点ともいえるくらい素晴らしい。

 

ナウシカ」ならディストピア的な世界観、「ラピュタ」ならファンタジックな世界観、「もののけ」なら寓話的な世界観の提示。

そう言った徹底された世界観が魅力で、どれも本当に素晴らしいし大好き。

不思議な世界、それらを俯瞰して観ている感じ。

 

やけど、『千と千尋の神隠し』が優れているのは、その不思議な世界観に対して、観客と同じ視点を持つ人物を主人公としているところ。

ゆえに、めちゃくちゃ主観で観れる。

 

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主人公の千尋は、親の仕事の都合で転校することになり、新たな街へ行く。

その途中に迷い込んだ場所が、不思議な世界への入り口となっていて、そこを生き抜くことを強いられる。

その中で彼女の生きる力が開花していく。

 

右も左も分からない千尋の感情と観客の感覚がリンクするから、そこに没入できる。

千尋という観客にとって身近な存在がいるから、没入しやすい。

 

アシタカやナウシカの様なカリスマが主人公なのはそれはそれでめちゃくちゃ面白いんやけど、こういうキャラクターを軸に置くのもいいよね。

 

しかも、それを子供の視点とすることで、子供からすれば不思議で不気味な感覚に魅了されるし、大人からすれば好奇心とノスタルジーをくすぐられる。

子供のころ見て楽しめたのはそういうことやったんやね。

 

 

さらに言うと、その等身大と思っていた千尋も、終盤に連れてだんだん「無限の強さを秘めたカリスマ」になっていくから凄い。ナルトやん。

 

 

 

 

 

 

 

等身大のキャラ、感情移入の対象としての千尋であると同時に、

「どんくさいけど、なんかほっとけない」

という千尋に対する感覚も共有してくれる。

 

千尋ほんまにどんくさいんやけど、純真で一生懸命で、なんか応援したくなる。

 

観客にその感覚を味あわせる役を担うは、リンと窯爺。

 

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「ほら!窯爺にお礼言ったの?お世話になったんだろ」

 

みたいな姉御肌なんやけど、めっちゃ優しい。

 

 

 

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窯爺も小さいころコワかったけど、今見たらめっちゃ優しいやん。

 

あらゆる視点で千尋をとらえることが出来た。

 

 

 

【言葉を用いない説明】

 

アニメーションって、実写にはない味わいがある。

 

不思議な世界観を描くなら、その世界観を徹底的にあぶりだすことが出来るし、

リアルな世界を描写するなら、観客の普遍的な感情を呼び起こすことが出来る。

 

アニメーションを巧みに使うことで、言葉を用いずにさまざまな感情を描いているのがホンマに最高やった。

 

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観たことがある人なら覚えているであろうこのシーン。

驚いたんやけど、このシーン、千尋はほとんど何も言葉を発さない。

じっと窓を見つめるシーンや、夜が近づく風景を描写したり。

彼女の感情を、言葉で説明しない。

 

だから、何のシーンか覚えていなくても、あの景色だけは鮮明に覚えていたし、改めてスクリーンで観たとき感動した。

いまあの景色を思い出すと、心が動く、それくらい素晴らしいアニメーションやった。

 

 

そのほか、子供の頃は気づかなかった味わい深い設定の数々。

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私欲を肥やす大人、本質を見る少女、大切なものを見誤る老婆、腐れ神と蔑まれた高潔な川の神、などなど。

それらを押し付けず、あくまで「におわせる」程度で配置する宮崎駿のクールさ。

 

 

 

幼いころにみていた世界って、すごく不思議に満ちていたし、大人には理解されないような常識で生きていた。成長するにつれ、だんだんいろいろ分かってきて、当たり前の景色を当たり前としか思えなくなってくるんやけど、この映画のファンタジーとリアリティの絶妙なバランスを前に、小さいころみた不思議な景色がフラッシュバックするような感覚がした。

 

 

 

【最高に泣いたシーン】

 

 

この映画のメインテーマめちゃくちゃ好きなんやけど、作中での使い方も最高やった。

 

不思議な世界に迷い込み、理不尽な常識の中で一人で立ち向かった千尋

不安で眠れない千尋を呼ぶハクの声。

 

千尋が元気になれるようまじないをかけた」

 

といいおにぎりを食べたとき、千尋は初めて泣く。

マスクがふやけるくらい俺も泣いた…

 

 

 

 

あと、カオナシ

 

 

「私のほしいものはあなたには絶対出せない」

 

 

って言い捨てる千尋も良かった。

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エンタメ:☆☆☆☆☆

テーマ :☆☆☆☆☆

バランス:☆☆☆☆☆

好き  :☆☆☆☆☆

計  20/20

 

 

 

大好き、一個も嫌いなものが無い。

 

 

 

 

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