1日1本映画レビュー 『パプリカ』
『パプリカ』
原題:『パプリカ』
公開:2006
監督:今敏
出演:林原めぐみ
他
夢と現実、日常への強烈なスパイス
以下感想。
【想像力をフルに稼働させてくれる】
夢が虚構なら、現実もまた然り。
夢に逃げる者もいれば、現実に閉じこもる者もいる。
今敏監督が仕掛けるアニメーション作品は、アニメーションにしかできない領域、アニメーションができる表現を最大限に引き出している。
夢と現実、その境目を曖昧にする怒涛のアニメーション。
映画の質量に圧倒され、その世界観に浸る中で、ピリッとしたテーマとメッセージを感じさせてくれるから凄い。
夢の世界を描いた作品としては、『インセプション』がある。おそらくインセプションはパプリカからインスピレーションをもらってるんちゃうかな。
パプリカは、インセプションに比べると結構曖昧というか、ファンタジック。
インセプションは細部までルールを詰め込んで、よりリアルに近い肌触りのあるSF映画やけど、パプリカはより空想的で抽象的、SF考証もあるけれど観客の想像に委ねる部分が多い。
とはいえ、ファンタジーに逃げないというか、しっかり映画のテーマを描き切る熱量みたいなのが伝わってきた。
こういう映画って、結構想像力というか、観客サイドがある程度噛みしめて、飲み込まないといけない部分も多いから、人によっては退屈に感じるかもしれないけれど、徹底された世界観と不可思議の連続を、映画に身をゆだねるようなイメージで楽しんでほしい。
【意外と普遍的なテーマ】
過去のトラウマ、現在のコンプレックス、未来への不安。
時を越えて人は目に見える現実と目に見えない現実の両方に惑わされ、悩まされ続ける。
その逃げ場として、「夢」があり、その世界にトリップ出来る技術がある、そんな世界。
しかし、夢のなか、その奥の深層世界に人間の真実があり、逃れられない敵がいる。
過去、現在、未来を受容し、力強く一歩を踏み出す、そんな清々しい脚本は素直に熱くて面白かったし、真っ直ぐに心に刺さった。
複雑で芸術性が強いんやけど、ちゃんと多くの人を魅了するだけのわかりやすさと完成度の高さがあった。
少し個人的に残念に感じたのは、キャラクターにあまり感情移入ができなかった。というか、感情を乗せる存在や大きくひかれるカリスマの存在に関しては少し薄かった印象。この辺は好みかな。
そのせいもあってか、前半の没入感とは変わって後半の展開は少し置いてけぼりというか、あまり入り込めず少し一歩引いた目線で観てしまったかな。
とはいえ、映画の着地点とテーマの心地よさが勝ったので良い。
【今敏の凄さ】
結構理屈っぽいことを言っていながら、ルールが明確にされない点も多くて、すこし消化不良を感じてしまうかもしれないけど、あまり細部には目を向けずに、「そうなったからこうなった」くらいの気持ちで観るといいかも。
映画の世界観に浸れるでけで楽しいし、アニメーションの凄さを味わうだけでも見る価値あるし、林原めぐみの声の可愛さを聴くだけでも心地いい。
夢と現実、その両方の残酷さと美しさを描いて、洗練された映画としてまとめ上げる今敏の手腕が凄い。きっと多くのアーティストに影響を与えたのでしょう。
エンタメ:☆☆☆★★
テーマ :☆☆☆☆★
バランス:☆☆☆☆★
好き :☆☆☆☆★
計 15/20
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