1日1本映画レビュー 『宮本から君へ』
『宮本から君へ』
原題:『宮本から君へ』
公開:2019
監督:真利子哲也
出演:池松壮亮
一ノ瀬ワタル
血と涙の劇薬ムービー
以下感想。
【画面から伝わる作り手と演者のエネルギー】
凄い映画!!
ここまで画面からエネルギーを感じる映画ってなかなか無い。
結構、提示される問題は多いんやけど、最終的に映画の焦点を絞ってるから、かなりガツンと心に来る映画やった。
濃厚でコッテリ系の映画ではあるんやけど、後味はさっぱりしてて、そんなにクドさは感じなかった。
かなり個人的にツボの映画!
【ぐちゃぐちゃになって演じきる池松&蒼井】
登場人物たちの表情とか体の動きをじっくり映して、キャラクターの感情を表現するのがうまかった。
いわゆる「熱演」みたいなのって苦手で、顔をぐちゃぐちゃにして大声を出せば熱演!!とは思わんけど、この映画に関しては「熱演」というのが正しいと思った。
もともと蒼井優って苦手な女優で、ルックスも演技もそんなに好きじゃない。
この映画でも苦手やなって思ったけど、中野靖子というキャラクターとして完璧やった。
かなり入り込んでて、若干のくどさこそあれ、それぐらいやらないと演じきれない!という気概を感じたな。
池松壮亮ってなんかちょっと低血圧な演技のイメージがあったけど、めちゃくちゃ情熱的で真っ直ぐなキャラを完璧に演じてたと思う。
等身大で、応援したくなるようなキャラクター像を見事に作りあげていた。
主人公の宮本は、真っ直ぐで、不器用で、滑稽な男。
やねんけど、どこかで自分に投影してしまうような親近感がある。
そんな彼が「絶対に避けられない」、「絶対に負けてはならない」戦いへ挑む。
かなり残酷で悲惨な展開やし、胸糞も悪くなる。
けど、それだけ打ちのめされてボロボロになるからこそ、そこから立ち上がる男のドラマがめちゃくちゃ熱くなれる!!
【語り掛けてくるようなタイトル】
「宮本から君へ」
なんてタイトルは卑怯よね!
そんなタイトルなら、観ている自分に刺さるに決まってるもん。
全身全霊で生きてるか?
戦わなければいけない相手から目を逸らしていないか?
己の尊厳を賭けて、立ち向かっていけるか?
自分の弱い部分と向き合うのってめちゃくちゃ勇気がいることやと思うんやけど、この映画は宮本という男を通じてそれを観客に強いてくる。
しかも、妙に生々しい形で。
だからこそ「サラリーマンに一番嫌われた漫画」なんやろうけど、それだけ観客を揺さぶってくる作品。
宮本は自分が目を逸らしたい負の部分を具現化したような男で、彼の弱さに共感できるから、素直に応援したくなる。
そんな彼が打ちのめされて、ボロボロになって、全てを失って…というのは、もはや自己破壊に等しい。
ここから立ち上がれ!と体からふつふつと熱いものが込みあがってくるのを感じた。
最弱の男宮本が、己の尊厳を賭け、立ち上がる。
俺がお前を守る!!!
そういってでっけー男に殴りかかって、ぶちのめされて歯を三本折って、周りにも見放されて。
それでも気に入らない奴に、自分をコケにする連中に、一発ブチ込もうとする宮本。
自分以外のすべてを敵に回してでも、自分というたった一人の味方のため、己のプライドを守るために、「絶対に負けてはならない戦い」へ立ち向かう。
そんな宮本の姿がたまらなく愛おしくなり、いつしか大声で応援したくなる。
がんばれ!!!宮本!!!
ぶん殴られて、指へし折られて、血だらけでヒイヒイ言いながら相手に立ち向かって、キンタマぶっ潰して「うぉっしゃあーーー!!」と叫ぶ。
それらすべて自己満足だと突き放されてもなお、へらへらと笑いながら、
「俺は俺という男に心底惚れてしまった」
と悦に浸る彼が、たまらなく好きでした。
男性向けの映画ではあるんやけど、女性にもおススメできる。
蒼井優演じる中野靖子が男のエゴとか自己満足を全部ぶった切ってくれるから。
男の自惚れも、くだらないちっぽけなプライドも、ちゃんとまとめてぶった切るから、快感!
とにかく、アドレナリンが湧いてきてくらくらする。
ピリッとした刺激になる劇薬ムービー。
エンタメ:☆☆☆☆☆
テーマ :☆☆☆☆★
バランス:☆☆☆☆★
好き :☆☆☆☆☆
計 18/20
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・マッドマックス怒りのデスロード
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