一日一本映画レビュー 『リトル・サブカル・ウォーズ~ヴィレヴァン!の逆襲~』
公開:2020
監督:後藤庸介
出演:岡山天音
滝藤賢一 他
ALL YOU NEED IS LOVE
以下感想。
【シアターに一人きり】
ポスターが可愛かったので映画館へ行ってみたら、21:10開演で、その10分前にも関わらずうじゃうじゃ人が。えっ!こんな人気な作品なんや!と思っていたら、『鬼滅の刃』の上映時間になった途端に映画館に俺一人になってしまった。恐るべし鬼滅ブーム!
めちゃくちゃマイナーというか、明らかにB級な映画なんやけど、たまにはこういうのもありかなと思って、思い切って鑑賞。案の定、スクリーンには俺一人やった。
舞台はイオンモール内のヴィレッジヴァンガード。そこの店員たちを主役とした物語で、どうやらメ~テレ制作でドラマがやっていて、その劇場版らしい。
ドラマを観ていない俺でも特に問題なく観れたけど、作品の空気感がいまいちわからずに、最初は若干困惑したな。
【俳優たちの魅力】
ヴィレヴァンといえばサブカルグッズ、サブカルといえばニッチな魅力をもつカルチャーで、メインの陰に隠れてひっそりと人々を楽しませている。
でも最近は「サブカル」という言葉そのものが覇権を得ているというか、その言葉に妙な付加価値が付随しているいやらしさがある。サブカルは「好きな人は好き」という立ち位置やとは思うんやけど、メインカルチャーに対する逆張りというか、サブカル好き=見る目がある と自称したがり、流行に逆らう自分を際立たせるための言葉のように扱われている気がしてて、正直この映画も期待してなかった。
しかし、この映画は、あくまで「分かる人にはわかる」「好きな人は好き」に逃げていないのが好感が持てた。
また、B級の匂いを確実に漂わせながらも、「くだらない映画だからマジにならないでね?w」という逃げの姿勢は感じられない。埼玉が翔ぶどこかの映画とは大違いで、個人的には好きになれた。
この映画に登場する俳優陣はかなり魅力的。
等身大な大学生を演じきった岡山天音は好きになれる人物やったし、滝藤賢一や平田満といったビッグネームも頼もしい。
周りを囲む女性陣、森川葵・最上もが・柏木ひなたは最高にキュート。演技も自然体で悪くない。
何より彼らが楽しんで撮影しているような空気が画面から伝わる。観ていて心地のいい空間を画面から与えてくれた。
【好きなものへの没入】
ストーリーは、ある日突然主人公が「サブカルを禁止された世界」に迷い込んでしまうという、突拍子もないもの。
そこから、「好きなものに没入することは素晴らしいことだ」というテーマへと繋がっていく。
さらに、先述した「サブカル」というモノへのいやらしさに対しての内省があり、どんなカルチャーであっても、それを好きになり夢中になることは最高に楽しい!という気持ちを改めて、爽やかに、認識させてくれた。
【遊びきれない退屈さ】
しかし、この映画は悪い点があって、遊び心があるようで遊びきれていない印象。
タイトルや冒頭のOPからのバリバリのスター・ウォーズパロディは良いんやけれども、結局のところテレビドラマの枠を出れていない。
コメディの自由さ、緩さ、その中の笑いは見事で楽しませてもらったんやけど、妙に「王道」を目指してしまったのか、中盤の中だるみと後半のつまらなさが少し目立った。
「分かる人には分かる」を最初から目指さない、それを自分から宣言しない姿勢は好きやけど、むしろ中庸を走ろうとしたせいで、突き抜けた楽しさや面白さがなかった。
監督の好き!が見える部分は大変魅力的やから、そこをもっと全体的に押してほしかったかも。『ウィーアーリトルゾンビーズ』のような遊び心と個性に満ちた映画になる可能性を孕んでいただけに個人的にすごくもったいなさを感じた。
【クオリティ以上の満足度】
とはいえ、作品の持つ魅力というのは伝わってきたし、映画館を出るときの満足感はしっかりあった。
どんな作品でも、この作品のように、しっかり観客を楽しませようという気概が画面から伝わってくると、やっぱりちゃんと心が動かされるんやな。
それはサブカルも同じで。メインカルチャーから外しているんではなくて、作り手の有り余る愛情ゆえにメインカルチャーからはぐれてしまったもの、それがサブカルなんかな。
どんなカルチャーもそこには情熱と愛情があり、それに熱中する人たちがいる。何かを好きになって楽しむって本当に素晴らしいことね。
エンタメ:☆☆☆★★
テーマ :☆☆☆★★
バランス:☆☆★★★
好き :☆☆☆☆★
12/20
〈オススメサブカル系が好きそうな映画〉
・ウィーアーリトルゾンビーズ
監督の好き!が満ち溢れている
・時計仕掛けのオレンジ
尖った完成の中に普遍的なテーマ