1日1本映画レビュー 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

 

原題:クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』

公開:2001

監督:原恵一

出演:矢島晶子

   ならはしみき

     藤原啓治

     

 

 

オトナから子供まで

 

 

 

以下感想。

 

 

【伝わってくる作り手の真剣さ】

 

 

子供向け映画ってたくさんある。

ポケモンドラえもん、コナンなどなど。

ディズニー映画とかも大枠はそうやし、このクレしん映画」も、当然子供向け映画

 

子供向け映画なんやから、そりゃ「大人が面白い<子供が楽しめる」であるべきではある。逆に、子供を楽しませるっていう部分を手放して大人のオナニーみたいな映画もだめやと思う。

けど、”子供向けだから・・・”っていうのはある種逃げの言い訳やと思ってる。

 

ていうのも、『子供は子供でちゃんと楽しめて、大人が観ても面白い』映画があるから。

つまり、子供だまし逃げずに、しっかりエンターテインメント映画として完成させようという気概を感じる映画が、確かに存在している。

 

そういう映画ってすごく大切やと思ってて、小手先の子供向け映画があふれると、それを観た子供は将来映画に興味を持たないと思う。

 

映画?子供の頃は良く観たけど、今はもう楽しめないな、と、

映画イコール子供のエンタメ

という等式が成立してしまう。

 

話は少し変わるけど、近年のコナン映画はそんな感じ。

今小学生や中学生、高校生あたりは楽しめるやろうけど、あれを見て他の映画には興味を持たないと思う。いずれ、コナン映画を楽しめる年ではなくなっていき、映画から離れることやろう。

 

まあ、映画に興味ない人はそれはそれで別にいいやろうけど、何の分野であれ、世の中からエンタメが廃れていくのって悲しくないか?

「暇やな、面白い映画でもないかな」という気持ちになったとき、退屈な映画まみれになるのは寂しい。

 

だから、小手先のエンタメに頼るような映画は大嫌いやし、どんな映画であっても、観るからには真剣に観る。「子供向け」というのは「子供を楽しませることを主目的としている」という意味であって、「クオリティが低くても許される」免罪符ではない。マンガの実写化とかもそう。

 

クレしん映画であっても、一つの映画として、ちゃんと観た。

 

 

 

【見事に描かれる喜怒哀楽】

 

まずこの映画は子供をグッと惹きこむ魅力がある。

というのも、『20世紀の、昭和の日本のノスタルジーに大人たちが囚われていく』という展開が、ゾクッとする恐怖感としてインパクトがある。親が親でなくなるような。

 

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この感覚は『千と千尋の神隠し』とかにもあるよね。

お父さんとお母さんが豚になる冒頭のシーン、子供の時めちゃくちゃコワかった。

 

なんとなく子供心にも感じ取れる違和感と、孤独という恐怖感。

子供にとっては「心に残る映像体験」として存在していながら、実はこのシーン、大人からすれば「見事なノスタルジーと共感」となっている。

 

そこから子供たちの冒険劇が始まる。

ワクワクするし、単純にコメディとして面白い。

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子供からすれば楽しくて、オトナからすれば「映画が描く一貫したテーマ」が見えだしてきて引き込まれる。

 

・ゾクッとする恐怖感、心に残る孤独感

・そこから始まる冒険劇のワクワク

・大人でも笑えるユーモア

・共感でき、魅力がある悪役

・そこから見えてくる映画のテーマ

 

 

90分の中の、わずか45分くらいでそれらを提示している見事さ。

 

 

 

【眩しくて真っ直ぐなテーマ】

 

この映画、「泣ける映画」として有名やけど、その文言どおり、確かに泣ける。

 

邦画が頼りがちな「泣ける」のパターンがあって、それは死と遺品。

 

誰かしらが死んで、その遺品を提示っていうパターン。

これ自体が悪いとは思わないけど、安易な手法やなとは思う。

 

例)病気で死ぬ⇒生前に書いた手紙が出てきて本当の感情が分かる

 

みたいな。

何度も言うけど、その流れが必ずしも悪いわけではないんやけど、雑にその流れを使ってるだけで「泣ける」って言われてる作品がちらほら。

 

この映画はその流れを使わずに、映画の中で丁寧に描いてきた部分の核に触れることで涙腺を揺さぶってくる。

クレしんってこんなにまっすぐで清い作品なの?と思う節はあるけど、この真っすぐさ、めちゃくちゃ良い。

 

今の自分に刺さるし、子供が観ても感動できるんちゃうかな。

とはいえ、多分大人の方が泣ける。

 

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【作り手の真剣さ】

 

やっぱり、映画としての完成度が高い。

たぶん子供のころこれを観てたら好きになってたと思うし、いまこれを観て大好きな作品になった。

おそらくあと何年か後に観直したなら、今以上にもっと好きになると思う。

 

それはたぶん、作り手の真剣さが伝わってくるからやと思う。

どの作品も真剣に作られてはいるやろうけど、映画というエンタメと向き合っているとは思えないような映画は確かに存在する。

 

子供から大人まで。

当時子供に連れられて嫌々観た大人が子供より涙し、リピーターの大人で映画館が埋まったという。子供向け映画、だからこそ、子供と同じくらいオトナも観る。

 

子供向け映画、だからこそ、子供と同じくらいオトナも観る。

子供も大人も最高に楽しませよう、という気概。

 

子供向け映画だからと思わず、真剣に楽しんでみてほしい。

 

 

 

 

エンタメ:☆☆☆☆☆

テーマ :☆☆☆☆★

バランス:☆☆☆☆☆

好き  :☆☆☆☆★

計  18/20

 

 

 

 

〈オススメの子供向け映画〉

ズートピア

 大人が観ても奥深くて面白い

千と千尋の神隠し

 わざわざ言うまでもない