1日1本映画レビュー 『ヴァスト・オブ・ナイト』

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『ヴァスト・オブ・ナイト』

 

原題:『The Vast of Night』

公開:2019

監督:アンドリュー・パターソン

出演:シエラ・マコーミック

   ジェイク・ボロヴィッツ

     

 

 

 

ワクワクとドキドキ、ちょっとのゾクゾクのSF

 

 

以下感想。

 

 

【映し方で安さをカバー】

 

Amazon Primeオリジナルかつ、俳優も無名、監督も無名なので、おそらく大した予算はかかってないであろう映画なんやけど、巧みな演出と舞台設定、キャラ設定によってそれを感じさせない見事なSF。

 

映画のオチや展開はわりとありきたりというか、王道SFをなぞったものかもしれないけど、そこに至るまでのワクワク感とドキドキ感、そこに少しのゾクゾク感を足し新しいものに仕上げている。

 

めちゃくちゃ派手な映画ではないし、大きく感情を揺さぶられたり印象に残るような映画とは言い切れないけど、作り手のセンスをヒシヒシと感じることのできる作品やった。

 

 

舞台は50年代のアメリカ。

まだまだ未知が潜んでいた時代背景と、そこに生きるキャラクターをしっかり活かしていた。

 

映画の主役は「電話交換手」と、ラジオDJ

彼らが生きる退屈なアメリカの日常は、”街に響く謎の音”によって覆される。

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理解不能なことを多くばら撒き、それらを少しづつ明かしていき、新たな謎を浮かべる。

それが連鎖していって…といった内容。

 

 

主役がラジオDJと電話交換手ということを活かして、視覚的な情報はほとんど与えられず、映画は「聴覚的な情報」を基盤に進む。

 

街に流れる謎の音について知っている匿名の電話、それらが異様な雰囲気を醸し出していることを警告してくる地域住民、そしてその謎のカギを握る謎の女性…

 

自然な流れで視覚情報をシャットアウトするから、すごくワクワクするし、同時にゾクゾクする。

視覚的に「安っぽい」と思わされるようなこともなくて済む。

かなり観客の想像力に委ねられる部分が大きいんやけど、しっかりそこを刺激してくれるから楽しい。

 

 

SF映画には珍しく、ワンカット長回しでキャラの会話劇を聞かせたり、反対に細かいカットを重ねて重ねてスタイリッシュに見せたり、異質なものを良い塩梅でリミックスして映画の面白さを生み出しているように思った。

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【結局は考えるな、感じろ、なのがSF映画らしいっちゃらしい】

 

映画の中の「謎」の提示、そこに観客を没入させるがうまいだけに、どうしても驚きの、大きな、そんなオチを期待してしまうんやけど、意外と最終的には「感じろ」なのが個人的には残念。

おそらくSF映画ファンからしたらむしろたまらん部分かもしれないけど、どうしても映画に大きなカタルシスを期待してしまうから、若干肩透かしを食らったかも。

 

少々ほったらかしな謎もあって、消化不良感も否めないけど、想像力を刺激している、と飲み込めないほどではなかった。

 

何より、そこに至るまでの見せ方や、事の運び方、丁寧なキャラ提示など、細部の部分と、未知の出来事や超自然に対してワクワクしたりドキドキしたりゾクゾクしたりする部分を楽しんでほしい。

 

 

 

 

エンタメ:☆☆☆★★

テーマ :☆☆★★★

バランス:☆☆☆☆★

好き  :☆☆☆★★

計  12/20

 

 90分そこらでサクッと観れるから、暇つぶしに良いかもね。

 

 

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